日本の大学院との違い

フィンランドに留学してみて感じている、日本とフィンランドの大学院の違いについて紹介します。


日本でもフィンランドでも、基本的には授業を履修し、試験を受けて(もしくはレポート等)単位を取得した上で、修士論文や博士論文を執筆し、審査に合格すると修了。学位を取得できます。

そういった基本的な部分は同じですが、単位取得に必要な労力、授業の仕組みは日本とは大きく違います。

授業

日本では、授業は毎週同じ時間にあり、半期の間に15回の授業で2単位ということが多いと思います。
こちらでは、授業によって単位が異なり、ECTSという単位で表されます。
これは、ヨーロッパ内での単位互換制度による単位です。

日本の1単位とこちらの1ECTSは=ではないので、単純な比較はできませんが、フィンランドの大学院では授業の形態によって与えられる単位数も異なります。
例えば、講義+テストの場合34ECTS。セミナーで4ECTS。などといった具合に。
その他にもラボラトリーワークであたったり、Webテストであったり、様々な形態の授業が用意されています。

さらに、授業は毎週同じ時間に同じ場所で、ということはなく、毎週場所も時間も変わる授業すらあります。
そのため、履修計画を立てる際には、授業のスケジュールをよく確認しておかなければ、同じ時間に2つの授業が重複する週が発生することも・・・。
よく確認して履修しなければなりません。



そして、日本では博士後期課程で求められる単位数は5単位程度ですが、こちらでは40ECTSくらい取得しなければなりません、
したがって、PhD studentでも授業がそれなりにあります。

授業があると言っても、日本の大学院のような形式ばかりの、「単位をとりあえず出さなければならないからやっている」というような授業ではありません。
例えば、学会のアブストラクトの書き方、学会のプレゼンテーション、論文のイントロダクションの書き方というような実用的な授業もあります。

たくさん単位を取らなければならないのは面倒かもしれませんが、それなりに有意義な授業が多いように感じます。
例え、日本でも博士後期課程で多くの単位を取ることが求められるようになったとしても、形式ばかりの授業が増えるだけだと思うので、日本は安易にこれを見習う必要はないと思いますが・・・。


研究

「研究をする」ということに関しては日本と同じだと思います。
ただし、使える時間が日本とは全然違うとは感じています。

日本では教員から頼まれる雑用によって多くの時間が浪費されていきます。
(少なくとも私はそうでした)
その雑用も研究に関係するもので、勉強になることがあるのも確かではありますが、自分の研究を進めるため、勉強するための時間が削られていることは間違いありません。

こちらでは、教員が研究を進めるにあたり、実験が必要であれば専門の技術者がそれを担当します。
したがって、学生に雑用として回ってくることは基本的にありません。
その一方で、修士の学生にはラボワークとして、これらの実験の補助をすることで単位が出るようになっており、専門の技術者の下で実験を手伝って様々なことが学べるようになっています。
こういったシステムがきちんとできていることは日本との大きな違いかもしれません。
もちろん、日本にもこのようなシステムができあがっている大学もあるかもしれませんが。


そして、このようなシステムのおかげで、研究が進みます。恐ろしく進みます。
論文があっという間に書き上げられます。

日本では、自分の研究ができる日が平日に週に1〜2日あるかどうか。
それでは足りないので、土日も研究室に行って研究を進めなければならないというような生活でした。

こちらに来てからは、雑用を頼まれることが一切なくなったので、平日5日間、まるごと自分の研究に充てられます。
朝8〜9時には研究を始めて、多少の休憩を挟みながら17時くらいまで作業をしたら帰宅。
土日は休み。
という生活でも日本にいたときの倍以上の時間を使えるので、進むのも当然でしょう。

日本のように、研究が中断される時間が少ないので、毎朝、頭を研究に切り換えるのも容易で、昨日の続きからすぐに作業を再開することができます。


日本の大学の研究力が落ちているなどと最近はよく言われていますが、院生も教員も雑用が多すぎて研究できる時間がとれていないのですから当然と言えるでしょう。
日本の大学はこれからもどんどん研究ができなくなっていって当然ですし、フィンランドのような国で学問が発達していくのも当然に思えます。

研究者を志すのであれば、正規留学して外国で学位を取るべき、とまでは言いませんが、半年や1年の留学でこういった世界を見ておく、体験しておくことは重要なことだと思います。